はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第75章 認知症の予防

年齢にかかわらず誰もがなり得る認知症について、一人ひとりが「自分ごと」として理解する必要があります。認知症になってからも、本人の意思が尊重され、住み慣れた環境で自分らしく暮らし続けることができるよう、認知症や認知症の本人についての理解を深めることが大切です。

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1 認知症

 1 認知症とは

「認知症」とは、様々な病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障を来した状態をいいます。

我が国では高齢化の進展とともに、認知症と診断される人も増加しています。65歳以上の高齢者を対象にした令和4年度の調査の推計では、認知症の人の割合は約12%、認知症の前段階と考えられている軽度認知障害の人の割合は約16%とされ、両方を合わせると3人に1人が認知機能にかかわる症状があることになります。

また、65歳未満で発症する認知症は「若年性認知症」と呼ばれます。若年性認知症の発症年齢は平均54歳と若く、女性が多い高齢者の認知症と違い男性が女性より少し多いという傾向があります。今日、認知症は、誰もがなり得ると考えられています。

認知症グラフ


 認知症は、大脳気質的変化によって生じます。①神経症状、②新規心理症状 ③行動異常・精神症状(BPSD)の3つの側面を持ちます。認知症の原因疾患となるものには、変性疾患、脳血管障害、頭部外傷など脳に影響を与える全身疾患など様々あります。

 2 MCIとは

MCIは、記憶障害などの軽度の認知機能の障害が認められますが、日常生活にはあまり支障がないため認知症とは診断されない状態です。MCIの人のうち、年間で10%から15%が認知症に移行するとされています。

軽度認知機能障害(MCI)は、認知症の残段階にあたる症状で、認知機能や記憶力の低下がみられます。ほおっておくと認知症に進行しますが、適切な予防をすることで健常な状態に戻る可能性があります。ですから、MCIは、早期発見が重要となります。

 3 MCIの定義

厚生労働省によるMCIの定義
  ① 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在します。
  ② 本人また家族による物忘れの訴えがあります。
  ③ 全般的な認知機能は正常範囲内であります。
  ④ 日常生活動作は自立しています。
  ⑤ 認知症ではないと否定します。

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2 衣食住について

 1 喫煙

「4年以上の喫煙者」と「非喫煙者」では、非喫煙者のほうが認知症発症リスクが低いことが明らかにされています。

喫煙量が多く、期間が長いほど、言葉の流暢性や記憶などの認知機能が低下しやすいようです。禁煙をすることで、高齢期からでも認知症発症リスクを低下させることができる可能性があります。

 2 難聴

① 耳の聞こえにくさがあると、認知症発症リスクが1.9倍になります。
 ② 補聴器を適切に使用することで、認知機能低下を遅らせる可能性があります。
 ③ 耳垢が溜まることで張力は低下しやすく、耳掃除である程度改善することもありま
  す。

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 3 睡眠

睡眠:睡眠時間が5時間未満の人、8時間以上の人は認知症発症リスクが高いので、睡眠時間は多すぎても短すぎても注意が必要です。

睡眠薬ではなく、部屋を暗くしたり、就寝直前までテレビを見ない、日光を浴びるなど、生活習慣の改善を試すことも大切です。

 4 飲酒

週に279g(約500ml×10本)異常のアルコール摂取は、認知症発症のリスクが高くなるといわれています。

MCIの場合は、週に192g(約500ml×7本)以上で、認知症発症リスクが高まる云われているので注意が必要です。

逆に、少量~中程度の飲酒は、認知症を予防する可能性が示されています。しかし、飲酒量には個人差があり、もともと飲酒しない人が無理に飲む必要はありません。

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 5 食事

食事に対して重要なことは、
① バランスの良い食事
② 接種カロリーを守る
③ 塩分を控える
④ 間食・糖分を控える

科学的に、認知症の進行を抑制する食材は現在証明されていません。食生活が乱れていると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まります。生活習慣病になると、アミロイドβの分解が減少する可能性があり、結果的に認知症のリスクが高まります。

青魚の鯖・サンマ・アジなどは、動脈硬化予防し脳を活性化させる作用があります。記憶力や判断力の向上も期待できます。黄緑色野菜・果物などは、動脈硬化予防や高血圧予防に有効です。

コーヒー・緑茶などは、アミロイドβの蓄積を抑える効果が期待できます。不要なたんぱく質を排出しますが、睡眠障害やめまいなどのリスクがあるため、摂取量に注意が必要です。

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 6 運動のメリット

運動すると脳の血流が増加したり、神経細胞が増えるといわれていますし、神経栄養因子と呼ばれるたんぱく質が増え、脳の容積が大きくなります。運動をすることで、認知機能低下に影響を与えるうつ症状の緩和や睡眠の質向上への効果も認められています。

週3回・週2時間以上の定期的な運動は認知症になるリスクが低くなります。

有酸素運動の全身を使って一定時期継続的に行う運動。(例:スクワット、ジョギング、ダンス)。レジスタンストレーニングの、筋力増強を目的とした運動(例:スクワット、腹筋運動)、複数の要素を含む運動が効果的です。

 7 コグニサイズ

認知症を患う人数は、今後大きく増えることが予想され、2025年に全国で約471万人と推計された人数が、2040年には約584万にのぼると推計されています。このような背景の中で、国立長寿医療研究センターは、自治体等との連携の下で研究を進めてきました。

そして、MCI(認知症ではないが正常とも言えない状態)の段階で、運動と認知トレーニングを組み合わせた「コグニサイズ」の実施が、認知機能の低下を抑制することを明らかにしました。

コグニサイズの名称は、国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。脳に認知的な負荷がかかるような各種の認知課題と、各種の運動課題が該当します。

運動は全身を使った中強度程度の負荷(軽く息がはずむ程度)がかかるものであり、脈拍数が上昇する(身体負荷のかかる運動)。運動と同時に実施する認知課題によって、運動の方法や認知課題自体をたまに間違えてしまう程度の負荷がかかっている(難易度の高い認知課題)を指します。

この目的は、運動で体の健康を促すと同時に、脳の活動を活発にする機会を増やし、認知症の発症を遅延させることです。コグニサイズの課題自体がうまくなることではありません。課題がうまくできるということは、脳への負担が少ないことを意味します。

課題に慣れ始めたら、どんどんと創意工夫によって内容を変えてください。「課題を考えること」も大事な課題です。できれば運動を行う皆で一緒にコグニサイズをすることで、間違えて笑って、試行錯誤しながら楽しんで行っていただくことを期待しています。

「長寿医療研修センター https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/27-4.html」

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4 認知機能をチェックしましょう

① 同じことを言ったり聞いたりする

② 物の名前が出てこなくなった。

③ 置き忘れや物忘れが目立ってきた。

④ 以前はあった関心や興味が失われた。

⑤ だらしなくなった。

⑥ 日課をしなくなった。

⑦ 時間や場所の感覚が不確かになった。

⑧ 慣れた場所で道に迷った。

⑨ 財布などが盗まれたという。

⑩ ささいなことで怒りっぽくなった。 

⑪ 蛇口・ガス栓の閉め忘れ、火の用心ができなくなった。

⑫ 複雑なテレビドラマが理解できない。

⑬ 夜中に急に起きだして騒いだ。

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4 参考資料

国立研究開発法人国立開発医療センター作成「あたまとからだを元気にるMCIハンドブック」。認知症について詳しく書かれていますので、クリックして確認しましょう。国立長寿医療研究センターなど。

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