1 日本海沿岸で発生する地震の特徴
谷岡勇市郎特任教授の講演
令和6年1月1日能登半島地震が発生し、能登半島は大きな災害を被りました。一年たった今の災害からの復興の途中です。この地震は、地震発生前から海底構造調査などによって海底構造調査などによって存在が知られていた海底活断層の存在が知られていた断層面を破壊することにより発生しました。
日本海東縁部の地震を発生させうる海域活断層については文部省科学省の受託事業「日本海地震・津波プロジェクト」(平成27年~令和2年)において詳細に調査されています。調査結果によると、北海道の日本海側にも多くの海底活断層の存在が確認されています。
つまり、日本海側の大地震は太平洋側の大地震のように太平洋プレートの沈み込みによるプレート境界(プレート上面)が断層面として破壊するプレート境界型地震ではなく、日本海沿岸沖に多く存在する海底活断層を破壊することで発生していることが明らかになってきました。
能登半島地震では地震断層が半島の直下にかかるほど沿岸に近かったため、直下型内陸地震と同様の強振動やそれに伴う複合災害となりました。また、地震と同時に沿岸が最大4mも隆起しため海岸にある施設も利用困難になりました。
日本海側では沿岸近くで発生した大地震により沿岸域が隆起・沈降することが過去にもありました。1872年浜田地震では震源近傍の沿岸が1~3m程度、隆起または沈降しました(場所によって隆起した場所と沈降した場所がある)。
1960年新潟地震では震源域内にあった栗島が1m程度隆起しました。さらに1993年の北海道南西沖地震では奥尻島が最大80cm程度沈降しました。これらの地震のように、日本海側の沿岸の近い海底活断層で地震が発生すると震源近傍の沿岸は大きな地殻変動(上下変動)を伴います。
能登半島地震では震源域近傍(能登半島北部沿岸)は隆起したため、そこでの津波の被害は大きくなりませんでした。しかし、もし地震と同時に大きく隆起した場合、沈降した分沿岸の標高が低くなるため、想定よりも津波の被害は甚大化すると思われます。
北海道では平成29年に調査されていた海底活断層から多くの想定断層を決め公表しています。それらの中には沿岸を震源域に含む断層も存在し、これらの断層が破壊した場合には、能登半島地震のときのように、沿岸で大きな地殻変動が予想されます。
稚内から手塩にかけての西側、礼文島・利尻島、天売島・焼尻島、奥尻島、道南西海岸の下には海底定活断層が存在し、断層が破壊する地震が発生した場合、大きな地殻変動を伴う可能性があります。つまり、地震と共に沈降する場合には、津波の被害が甚大化する可能性があります。
北海道が想定しいる津波にはそれらの地殻変動の効果も含まれていますが、いずれにしても沿岸の近く変動は地震後も残るため、能登半島地震と同様に沿岸施設の復興には時間がかかると予測できます。
さらに、能登半島地震と同様に複合災害が発生する可能性が高いと考えられます。今後、日本海側の大地震に対する災害軽減対策を考えるうえで、能登半島地震から学ぶことは多いと思います。