1 我が国の取り組み
1 慢性腎臓病の取り組み
我が国の腎疾患・腎不全対策としては、昭和47年度より腎不全を身体障害者の内部障害に位置づけ、透析療法を障害保健福祉分野の更生医療の対象とするなど、自己負担の軽減を図るとともに、 透析装置不足地域の医療機関における人工腎臓装置の整備を進めています。
近年の透析医療の状況については、透析患者数は、毎年1万人程度増え続け平成20年末には28万人を超えています。腎疾患は国民の健康に重大な影響を及ぼし、腎疾患の発症・進展予防対策を強化することは喫緊の課題です。
慢性腎臓病(CKD)は、生命や生活の質に重大な影響を与えうる重篤な疾患ですが、腎機能異常が軽度であれば、適切な治療を行うことにより進行を予防することが可能です。しかし、CKDに対する社会的な認知度は低く、潜在的なCKD患者が多数存在すると推測され、医療現場においても見過ごされがちです。
腎不全による死亡は死亡原因の第8位となっています。慢性腎臓病(CKD)は生命や生活の質に重大な影響を与えうる重篤な疾患ですが、腎機能異常が軽度であれば、適切な治療を行うことにより進行を予防することが可能です。
しかし、CKD対する社会的な認知度は低く、潜在的なCKD患者が多数存在すると推測され、医療現場においても見過ごされがちです。すべてのCKD患者に腎臓専門医が対応することは困難であり、患者の多くが受診するかかりつけ医の資質向上等の人材育成が必要です。
このような状況の下、腎機能異常の重症化を防止し、慢性腎不全による人工透析導入への進行を阻止すること。さらにCKDに伴う循環器疾患の発症を抑制することを目的として平成20年3月に「今後の腎疾患対策のあり方について」報告書がまとめられました。
また、一部の都道府県においては、平成21年度より、講演会等の開催や医療関係者を対象とした研修等を実施し、広くCKDに関する正しい知識の普及、CKD対策に必要な人材の育成等を図ることを目的として、慢性腎臓病(CKD)特別対策事業を実施しています。
3月第2木曜日は「世界腎臓デー」、腎臓の日です。日本腎臓学会は「透析患者を減らし、腎不全合併症を予防する」ことを目標に慢性腎臓病(CKD)対策を推進しています。
2 我が国のCKD対策
世界腎臓デーは、国際腎臓学会と国際腎臓財団連合が、慢性腎臓病(CKD)の認識を高めるために制定して、皆さんが腎臓の検査を受けるようキャンペーン活動を行ってきました。
我が国では2007年以降慢性腎臓病対策協議会が中心となり、東京で啓発イベントを毎年開催しています。腎臓病の最大の課題は透析患者の増加です。日本透析医学会の統計調査によると、2008年末には約28万3千人に達しました。透析患者は過去30年毎年ほぼ1万人増加しています。
現在、日本人の450人に一人が透析を受けていることになり、人口当たりの透析患者さんの数は世界第二位とも言われています。透析患者の増加は透析にかかわる医療費を押し上げ、わが国の医療保険制度を圧迫しています。
CKDは「たんぱく尿など腎臓に障害を示すサイン」、または糸球体濾過量が60ml/分(腎臓の機能を示す指標で、およそ正常の60%にあたる)未満に低下している状態が3か月以上続く状態です。
日本腎臓学会の集計によるとわが国のCKD患者数は約1,330万人で、成人の8人に一人がCKDです。CKDが進行していくと透析が必要になるばかりでなく、動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくなります。
つまり、数が多いだけでなく生命予後も悪いCKDは新たな国民病です。CKDになる前に予防することも重要です。糖尿病、高血圧、メタボリック・シンドロームの病気を有する場合はCKDのハイリスク群です。CKDになっていないか、CKDが進んでいないか、定期的に血清クレアチニンの測定と検尿検査をしてください。
CKDの2大原因疾患である慢性糸球体腎炎と糖尿病性腎症は、不治の病といわれていましたが、最近では早期発見により早期に治療すれば「腎臓病がなおる」ことさえ可能な時代になりました。あきらめずにしっかり治療を続けましょう。
3 慢性腎臓病予防の食生活
慢性腎臓病(CKD)発症には、生活習慣病(肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常)や動脈硬化が大きく関わっていると言われています。従ってCKD予防に関してはこれらの疾患の予防が重要です。食生活における主なポイントとして次のような点があげられます。
1 肥満の改善
肥満はCKDを引き起こす危険因子であると言われています。もし肥満であれば肥満を解消することが重要です。肥満かどうかを判定する方法としてBMI(体格指数)があります。BMIは次の計算式で求めることができます。
「BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」
標準は18.5~25未満であり25以上であれば肥満と判定されます。一度計算してみましょう。そして、もし肥満と判定された場合は、日ごろの食生活(食事量の確認・嗜好品の取りすぎはないか、バランスのとれた食事など)・運動習慣(適度もの)を見直すことも必要です。
2 塩分の取りすぎ
高血圧は腎臓の細かい血管を障害し、CKDの原因となったりCKDを悪化させたりすることが知られています。また、高血圧を招く要因のひとつとして塩分の摂り過ぎがあるといわれています。
WHO推奨5g、アメリカ5.8g、イギリス6g、インド9.5、フランス9.6g、ドイツ9.0g、ロシア10.6g、日本10.9g、中国12.3g、韓国13.2g
平成20年度厚労省国民健康栄養調査での、日本人の塩分摂取量は平均10.9gでした。まだ塩分摂取過剰状態にあることがわかります。また塩分摂取量の傾向は地域性もあると言われています。
塩分摂取に対する食生活での注意、見直しが必要です。食生活上での減塩のポイントは漬物、加工食品、麺類等の摂り過ぎはないか、毎食味噌汁を飲んでいないか、などを確認し思い当たることがあれば見直しましょう。